SEMINAR セミナー情報

Value aging 講演会・セミナー ずっと元気に、つながりあう社会に向けて

 2月24日、東京都千代田区の大手町サンケイプラザで「Value aging(バリューエイジング)講演会・セミナー」が開催された。認知症の実母の介護体験をもつ歌手の橋幸夫さんによる講演をはじめ、数々のセミナーを通して自分らしい年齢の重ね方を実現するうえで有益な情報を発信。多数の聴衆が熱心に耳を傾けた。

講演会 橋 幸夫の介護体験から~ 一生健康・一生学習

健康に生き、老い、暮らしていくために

人生を変えた数年間の介護

 橋幸夫さんは1989年に実母の認知症を告白、介護体験をつづった著書はベストセラーとなった。その後も全国各地で講演活動を続け、長寿社会・日本に一石を投じている。
 橋さんは母親の認知症の発症当初について「認知症についての理解もなく、専門の医師もほとんどいない時代。誰に相談したらいいかも分かりませんでした」と振り返る。「おふくろをどうすれば」と自ら情報を集めながら、一家での介護生活の時を過ごした。
 思えば、最初は物忘れ。人の顔や名前が思い出せなかったり、物を探して部屋を動き回ったりといった「小ぼけ、中ぼけ」を繰り返すうちに症状が進行し、しだいに妄想や虚言、徘徊などが頻繁に。亡くなった夫の幻覚を見たりしている母を、橋さんは見守った。「認知症は本人も葛藤しているから、介護する側は否定せず、すべて受け入れることが大切」と力を込める。
 最後の1年間は施設での介護に切り替えたが、面会に訪れても元気なときもあれば、「どなたさまですか」と聞かれたことも。一方、息子のデビュー曲の「潮来笠」がお気に入りで、施設職員に歌ってもらっていたこともあるという。
 「芸能界ばかりを見てきた私にとって、家族ぐるみで母と暮らした数年間は、人生を変えるものでした」。著書のタイトル『お母さんは宇宙人』については「外の世界に出掛けた母が時々戻ってきて、メッセージを伝えてくれる。そう思えば楽になりますし、心の持ち方一つで介護する意識も変わります」との思いがある。
 たとえ認知症になっても、意識の一部がはっきりしていることは珍しくない。そしてつらいと思ってお世話をしていると、認知症であっても、人は表情、顔色から気持ちを察してしまう。体験を通して学んだことの一つだ。

自ら学び、ケアに役立てて

 演題に掲げた「一生健康・一生学習」とは、橋さんが介護体験と、長年の啓蒙活動を通じて強く感じていることだという。一生を通じた健康は全人類に共通する願いであり、健康だからこそ喜びやうれしさがある。そして学習とは、日々の出会いや感じることすべてが学びとなる。
 橋さんが介護した頃と比べて、日進月歩で医学が進み、認知症の情報や民間施設も増えた。よりケアしやすい時代になったといえるが、橋さんは「認知症について積極的に学ぼうという人はまだまだ少ないのでは」と課題を感じてもいる。
 日本人の平均寿命は2013年には男女とも80歳を超え、世界一の長寿国になった。だからこそ「第一に健康でなければいけません」と橋さん。そのためには体の健康とともに、「外からは見えない脳の疾患、認知症に気をつけなければいけません」。
 日本に多いといわれている三大認知症は、脳血管性、アルツハイマー性、レビー小体型。近年増加している若年性認知症を含めて、460万人の患者と400万人の予備群がいるとされる。いずれも脳に障害が起きることが原因とみられている。「認知症は個人差がある病気。多くは記憶力から障害が出はじめること、お年寄りばかりに起こるのではないことなど、幅広く学習し、ケアに役立ててほしい」と訴える。橋さん自身、還暦を過ぎた頃から体の変化を実感している。「不調がでるのは当たり前。しかし、当たり前の出来事を先に延ばしていくことはできます」と、自らのケアに心を配っているという。
 いわば認知症も老いの一環だが、家族に向けては「明日はわが身になるかもしれないという認識を持つこと。いつそうなってもいいという覚悟を持つこと。認知症に対して一家で向き合うこと。介護者は、お年寄りの人格を尊重することが大切」などと提言。また高齢者は意識がしっかりしているうちに、どういう介護をされたいかや、財産状況などを具体的なメモで残しておくようにアドバイスを送り、講演をしめくくった。